運動器検診とは
お子さんが学校から持ち帰って来た「運動器検診の結果について」という用紙。
読んでみると「わが子に病気でも見つかったのか?」と、不安になるようなことが書いてあります。
そもそも「運動器検診」という言葉が初耳ですよね。
自分たちの時代にはなかった検査項目です。
「運動器」とは骨・関節、筋肉・靭帯・腱、そして神経など身体を支えたり動かしたりする器官の総称です。
ところで「ロコモ」という言葉を耳にしたことはありませんか?
ロコモとは「ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome)」の略称で、「運動器症候群」という和名になります。
病気で身体が不自由になったり、加齢で体力が衰えたり、誰でも歳を重ねるにつれて要介護の状態になるリスクが高まります。
普段から運動器の状態を意識してロコモを予防しましょう、ということが近年注目されているのです。
そしてロコモは高齢者に限った話ではなく、生活習慣の変化(スマホなど)や運動不足(遊びの屋内化)によって成長期の子どもたちも気を付けた方がいいのではないか?という話になってきています。
このような経緯で平成28年から始まったのが「運動器検診」というものなのです。
運動器検診で引っかかる原因
運動器検診の結果の例として、以下のように区分してチェックが行われます。
- 上肢(肩・肘・手)
- 脊柱(脊柱側弯・腰椎)
- 下肢(股関節・膝・足関節・足)
- その他
そして整形外科の視点から問題ありと判断される場合、多くは原因として
- 運動不足
- 運動過多
の2つに分けて考えられます。
運動不足が原因
運動不足が原因で引っかかるものとしては
- 片足立ちが5秒以上できるか(体幹の筋力)
- 足底を完全に床につけてしゃがめるかどうか(関節の柔軟性)
といったものが挙げられます。
これらは運動不足だといい結果が出ませんので、それを目安に判断するようです。
ただ「持って生まれたバランス感覚や柔軟性」もあると思うので、一概には言えないと思いますが。
運動不足が原因と思われるものには、やはり自発的に身体を動かすしかありません。
自分もそうだったのですが、運動が苦手・嫌いという子の多くは
- 運動音痴を自覚していて、友だちと比べられるのが苦痛
- 運動の楽しさや、運動後の気持ちよさを知らない
というケースが多いと思います。
いっしょにジョギングしてみたり、うまく誘導して本人が運動に興味を持つようなキッカケを作るのが理想ではないでしょうか。
運動過多が原因
クラブ活動など子どもがスポーツをする場合、多くは「結果」を目指して取り組みます。
大会で優勝する・タイムを縮める等、目標を意識して頑張るので「オーバーワーク」になりがちです。
大人が健康のためにスポーツクラブに通うのと大きく違うところですね。
そしてトレーニングが過酷になる分、当然「怪我や故障」のリスクは高まります。
野球肩、テニス肘、オスグッド、シンスプリントといった症状は、その典型といえるでしょう。
レントゲン等、整形外科での画像診断で異常が見つからなかった場合、一番効果的なものは「休養」です。
人間には自然治癒力という自己回復の機能が備わっています。
「練習を何日間かお休み」すれば、多くの症状は改善するでしょう。
ところが現実はそれが難しいのですよね。
部活動で身体を痛めている子の多くは、目標に向かって頑張っている最中です。
大会を間近に控えた子や、レギュラー争い真っ只中の子に
「身体を治すために半月ぐらい練習休みなさい」
といったアドバイスすることは、親としてとても心苦しく、また本人にも受け入れてもらえないことでしょう。
そこで回復をサポートするために、整形外科で理学療法士によるリハビリを受けることが一つの解決策になります。
ストレッチやマッサージなどを受けることで、単に休むよりも早い回復を目指すわけです。
加えて当院の整体を受けていただくと、さらに回復が早まるケースもあります。
病院では疾患部位の周辺しか治療しませんが、当院では全身にわたって必要なケアを行います。(中学生のお子さんで、脚の痛みが肩で変化するケースもありました)
マッサージや整体を受けることは疲労回復を早めるのに役立ちます。
(過去の症例)
当院では野球少年、特にピッチャーのお子さんをみせていただくことが多いです。
ある子が「しばらく練習を休んだ方がいいし、休まないと痛みが引かない状態」で来院されました。
しかし本人の口からは「練習は休めない、休みたくない」という言葉、何とか痛みを良くして欲しいと切実に訴えられました。
ちょうど甲子園出場に向けてレギュラー争いの最中で、練習を休むことがそのままレギュラー争いから外れるような状態ということでした。
当院の受付に間に合うよう練習を早退し、毎日のように通ってもらいました。
来院されなくなってしばらく経った頃、新聞のスポーツ欄にその子の名前を見つけた時は、嬉しさと同時にホッとした気持ちになりました。
姿勢の問題
意識しても、姿勢を正せない時が来る
若いうちは「姿勢が悪いのは、普段から意識していれば治る」と思いがちです。
ところが歳を取ってくると、意識しても姿勢を正せなくなります。
お歳を召された方の中には「背中が丸い人」や「腰が曲がっている人」がいますよね。
そういう人に「姿勢を良くしてみてください」とお願いすると、ある程度背筋は伸びますが、ピンとした状態まで行かないことがほとんどです。
自分では背筋を伸ばしているつもりでも、筋肉が固まり切っていてイメージするほど伸びていないのです。
50歳を過ぎると筋肉は急激に衰え始め、1年で1%のペースで萎縮していくと言われています。
「仰向きで寝づらい」のは、背中や腰が曲がり始めているせいかもしれません。
「疲労の蓄積」が姿勢を悪くする
筋肉が固まり切ってしまう原因として考えられるのは、次の2つです。
- 加齢による弾性低下
- 疲労の蓄積による硬化
誰でも若い頃と比べれば、筋肉の質に限らず、肌の新陳代謝も含めて低下していきます。
では同い年で比較した場合はどうでしょうか?
同じ80歳でも腰が「くの字」に曲がった人もいれば、着物が似合う良い姿勢の人もいます。
この差は加齢でなく、日頃の生活での筋肉へのダメージの差、疲労の蓄積の違いによって生じたと考えるのが妥当です。
筋肉は運動・勉強・緊張など、疲労や硬直する量が多いほど固くなっていきます。
肩こりなど、いわゆる「こっている」状態です。
(注)自覚症状がなくても、コリを抱えたまま生活している人はたくさんいます。
特に骨格を支える筋肉(骨格筋)が背骨の左右でアンバランスに疲れている(凝り固まっている)と、背骨がゆがむ原因になります。
誰でも「利き手」側の肩・背中が凝りやすく、背骨の左右で支える力が均等にならないので、背骨が曲がってきます。
背骨は自身が主体となって曲がりません。
筋肉の収縮につられて背骨は動くのです。
ですから「背骨が曲がっている」という理由で、背骨を直接触ってどうこうするのはナンセンスです。
背骨がゆがんでるのは、筋肉に引っ張られているせい。
まず歪んだ背骨のまわりの、偏った筋肉緊張を解消してあげましょう。
【姿勢の問題は整体で】
- 背骨が側弯している。 ⇒ 背骨に繋がる筋肉の左右バランスを整えます。
- (片方の)肩が下がっている。 ⇒ 肩甲骨周辺の筋肉の、左右どちらかが極端に凝っている可能性があります。
- 股関節・膝・足の問題。 ⇒ 整形で骨に異常が見つからなければ、骨盤まわりの筋肉バランスを調整します。骨盤の傾きがトラブルのもとになっているケースが多いです。
(老人健診で身長が伸びた話)
ここに通い始めて数年経ったころ、「3年前と比べて3cm身長が伸びた(戻った)」と喜ばれた方がみえました。
背中の丸みが慢性化すると、身長測定の時にいくら頑張っても完全に背筋が伸び切りません。
通っていただいているうちに、数年前よりも背筋が伸びるようになったのでしょう。